雨乞棚山と雨乞い神事
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 雨乞棚山は付知町の東に大きくそびえる阿寺山地の前衛峰です。名のごとく雨乞いが行われた山です。雨乞いは、先の大戦ころまで全国各地にあった風習です。梅雨になっても日照りが続くと雨乞いを行いました。雨乞棚山の場合は、山頂近くの木を切り倒して、里まで木をひいて付知川に流したといいます。その木が伊勢神宮まで流れつくまでに雨が降るように祈りました。木曽川、飛騨川水系の地域では、川が伊勢湾につながることから、このような雨乞いを行いました。(高天良山参照)
 雨乞いの儀式は、県下各地で異なっており、また同じ村でも様々な方法で行いました。それをまとめると次のようです。まず、各村の近くの神社、山、池などで、雨乞い神事を行います。神事は、神社で雨乞い歌とともに踊りをおこなう場合、川の増水を願って木を川に流す場合、池や穴に物を投げて竜神を怒らせようとする場合、天に近い山頂で火をたいて踊る場合、鎌を使ってお祈りする場合など様々です。それでも雨が降らないと、もっと霊験があると思われる次のような別の神様(竜神)にお参りしました。
 たとえば、主に東濃・中濃地方では、雨乞いの神様として信仰が厚い笠置山の大御鎌様(笠置山参照)から鎌を借りて神事を行い、主に中濃から岐阜、西濃地方では、水の神として名高い多度大社に雨乞いのご祈祷を受けに行ったり、西濃、揖斐川流域では夜叉姫の伝説で名高い夜叉ヶ池の竜神(三周ヶ岳参照)にお参りに行くこともありました。飛騨地方では、水の神として飛騨、信州の信仰を集めた乗鞍岳(乗鞍権現)大丹生ヶ池まで集団でお参りしました。(乗鞍岳参照)。雨が降るまで、あの手この手を使ってお祈りをしたのです。(高山、船山寒陽気山手掛岩山仏ヶ尾山双六岳舟伏山御前山下呂御前山八尾山高賀山横岳参照)
 雨乞棚山へは、付知町尾ヶ平から東股田瀬林道に入り登山口まで行きました。林道が三叉路になっているところに自動車を置き、登山道に入ると、山頂付近の地形は階段状になっていました。山名の「棚」はこの地形から付いたようです。台風一過の晴天でした。
【参考】岐阜県山岳連盟(1975):ぎふ百山、岐阜日日新聞社
岐阜県小中学校長会(1999):ふるさとの行事、岐阜県校長会館
杉原明雄(1977):更地の雨乞い、美濃民俗126号
高井 健(1975):美濃白川における雨乞いの習俗、美濃民俗99号


山頂付近からふもとの付知町を望む
【登頂日】1997年6月29日
【標高】1391m
【場所】岐阜県恵那郡付知町
【記録】12:06 林道登山口 12:44 山頂着 13:36 山頂発 14:16 林道登山口(1100m)