暑さ寒さの山・寒陽気山
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 寒陽気山は、山姿秀麗であるためふもとの白川町柿反上(かきぞれ)では柿反上富士ともいいます。寒陽気山は、雨乞棚(雨乞いの山)のひとつでした(雨乞棚山参照)。そのおもしろい山名は、地元の人によると寒の頃、柿反上から見ると太陽がこの山から出てくるためだといいます。また東白川村誌によれば、大暑の頃、うっそうとした山の森林の中は寒さを感じることからその名が付けられたともいいます。
 気候地名をさぐるによると、このような日当たりに関する地名は、北海道を除く全国に分布していますが、特に中部地方に多くあります。また、日当たりや寒暖、雨、風、霧、雲等にちなむ地名を気候地名といいます。(北夕森山参照)
 白川町でいえば、黒川地区、柿反上のすく近くに日面下(ひおもしも)、赤河地区に日向(ひよも)、北隣の東白川村でいえば、日向(ひおも)と陰地(おんち)があります。このような地名のある場所は、山間地で東西方向の谷です。理由は、南北方向の谷に比べて場所による日当たりの違いが大きいからです。(地名雑考)
 寒陽気山は、柿反上から見ると、東西方向の谷の東の端にたたずむ秀麗な山なので、寒の頃、山から昇る日の出が意識されたと思います。このように日当たりや陽気が山名になる場合は多くありませんが、岐阜県内では、白川村に日照岳、丹生川村に日影平山、上宝村に輝山(てらしやま)、美山町に日永岳、神岡町に朝日ヶ原(流葉山参照)があります。日照岳と朝日ヶ原は、ふもとから見るといち早く朝陽があたるための山名です。したがって、寒陽気山とは逆にふもとの西方に山があります。日影平山は、ふもとの日影の地名(日影平山参照)からきています。日永岳は、東側の板取方面から見ると永く陽が当たっているからです。久々野町に日ノ観ヶ岳がありますが、この山名は日当たりではなく、この山から日の出を拝んだことからきた山名です。(日永岳参照)
 寒陽気山へは、大多尾峠から尾根に沿って登山道があります。登山口の標識もあり、迷うことなく山頂に立てます。
【参考】山内和孝(1977):地名雑考、岐阜地理16号
吉野正敏(1997):気候地名をさぐる、学生社
苅田乙三郎(1914):東白川村誌、苅田乙三郎

東白川村下親田から秀麗な寒陽気山

【登頂日】1997年1月11日
【標高】1108m
【場所】岐阜県加茂郡白川町
【記録】11:24 大多尾峠 12:17 山頂着 13:30 山頂発 14:13 大多尾峠着