御前山の御前観音
山語り目次  地図検索
 益田郡萩原町の御前山には、覚明行者が御嶽開山を祈願したことに始まるという伝説があります。御前山は、その名の示す通り、御嶽山の遥拝所で、お前立ちの意があります。(御嶽山参照)
 益田郡誌によると、「山頂の五善(御前)観音は、織田信長が岐阜城の、鬼門除けとして建立した。像には黄金を付せてあったが、いつしか山賊の手に奪われ、高山町から買い入れた。これも山賊に奪われ、今度は京都から買い入れた。登山道には、33体の石仏を安置してあったが、12、13体くらいしか残っていない。」とあります。飛騨遺乗合府によると、「御前山に黄金の尊像があり、かつては山頂に寺院や伽藍があった。雨乞いに霊験がある。」と記されています。(拝殿山下呂御前山唐塩山八尾山参照)
 飛州志では次の記述があります。「絶頂をさして御前といい、その窟中に十一面観音の像がある。鋳仏のようであるが銅製かもしれない。里人がいうには、古くは伽藍や塔坊が多くあったが寺院の名称はわからない。村里が旱魃のときは、郷民は御前に登山して雨乞いをした。このとき、御前観音に祈るのが古来からの風習で、霊験が得られなかったことはない。」(雨乞棚山参照)
 以上のように、御前山は古くからの信仰の山でした。「飛騨国中案内」には、次のように御前山からの眺めの記述があります。「御前山からは、信州の駒ケ岳、信州の恵那ヶ岳、濃州江州の境山の伊吹山が見える。」 岐阜城のあった金華山から御嶽山を望むと、その手前に御前山が見えるに違いありません。
 御前山へは、谷沿いに登る桜洞ルートが一般的です。4合目近くまで林道があります。一方、JR利用の場合は、登りに尾根すじの上村ルートを利用するとおもしろそうです。白山神社横から登りますが、途中、いくつかの観音様をたどることになります。
【参考】長谷川忠崇(1745):飛州志、岐阜新聞社(復刻版)
上村義満(1746):飛騨国中案内、大衆書房(復刻板)
桐山力所(1858頃):飛騨遺乗合府、大衆書房(復刻版)
益田郡役所(1916):岐阜県益田郡誌、益田郡役所

雪の御前山の山頂
【登頂日】2002年12月21日など
【標高】1646m
【場所】岐阜県益田郡萩原町
【記録】8:40 水洞口登山道入口(桜洞ルート) 9:30 7合目(1260m) 9:50 屏風岩 10:00 8合目 10:15 9合目 10:55 山頂着 11:30 山頂発 11:45 9合目 12:00 8合目 12:05 屏風岩 12:20 7合目 12:30 6合目 12:50 登山口