中間温帯林の山頂・高森山
山語り目次  地図検索
 高森山など、阿寺山地や南飛騨、御岳周辺の山頂の天然樹林(標高700m〜1,700m)は、ブナでなくたいていヒノキやサワラです。山頂や岩峰は、樹木の生育にとって養分が流出しやすく水分の保持も難しい悪条件の場所です。(唐塩山参照)
 高森山のヒノキは中間温帯林のひとつです。一般に中部日本の自然植生(ヒトの影響がないとした場合)は、標高700mまでは照葉樹林(シイ、カシなど)、標高1,700mまでは夏緑樹林(ブナ、ミズナラなど)、2,500mまでは針葉樹林(シラビソ、オオシラビソなど)とされています。これに加え、内陸部では、照葉樹林と夏緑樹林の間に、ブナの代わりの中間温帯林が分布します。(森を読む、北アルプス山楽山歩)(井出ノ小路山黒手山六谷山参照)
 つまり中部地方の中間温帯林は、雪が比較的少なく寒冷な内陸で、ブナもカシも生育しない場所にあります。その樹種は、ヒノキやサワラの他、場所によってモミ、ツガ、ケヤキ、イヌブナなどです。そのうちの針葉樹は、亜高山帯の針葉樹と区別して温帯針葉樹ということもあります。被子植物よりも古い起源の温帯針葉樹が、なぜ日本に豊富なのかよくわかりません。ただ、氷河時代の日本列島では氷河が少なく、これら針葉樹が絶滅しませんでした。さらに、ブナは冬に乾燥する内陸や太平洋側の山地では育ちが悪い傾向です。また新芽が早いブナは、雪の保護が少なく寒冷な内陸では芽が霜害を受けやすいようです。そのため、ブナ等にとって悪条件の内陸や山頂等に、温帯針葉樹が生き残ったと推定できます。(ぎふ百山、北アルプス山楽山歩)(北之俣岳吐月峰丸黒山白草山桧ヶ尾山参照)
 高森山へは、下呂町乗政側の林道終点、白草山登山口の標識まで行きます。白草山登山道に入らず、そのまま道なき谷をつめて山頂をめざしました。やがて空谷になり、谷が二股に分かれた所で、左側の支流を登りました。岩壁の左側の窪地から登りきると、御岳や白草山がヒノキの樹間から見える平坦な山頂部でした。三角点はありません。
【参考】大場秀章(1991):森を読む、岩波書店
岐阜県山岳連盟(1975):ぎふ百山、岐阜日日新聞社
小野木三郎(1989):北アルプス山楽山歩、教育出版文化協会

山頂のヒノキ
【登頂日】1997年6月1日
【標高】1592m
【場所】岐阜県益田郡下呂町
【記録】9:13 黒谷林道ゲート 9:38 黒谷林道終点 10:45 空谷(二股)標高1330m 12:35 山頂着 13:50 山頂発 14:50 空谷(二股) 15:24 黒谷林道終点 15:46 黒谷林道ゲート