吐月峰のコウヤマキとツガ
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 吐月峰(とげっぽう)は、中山七里と呼ばれる飛騨川(益田川)沿いにある山です。下呂町久野川から和佐に抜ける林道(舗装道路)に入り、山麓東側の標高500m付近から登れます。スギが植林してある浅い谷を直登しましたが、下山してみると横(北側)に山道があることに気づきました。山頂に続く稜線はほぼ平らでミヤコザサの中に道があります。
 稜線は、ヒノキの植林のため見通しはききません。樹間に雪をかぶった霊峰御岳が見えました。その林の中に、コウヤマキがたくさんありました。途中には、山の持ち主らしき人による「マキの木を切るな。」の看板が3つもありました。また山頂等ではツガの木も目につきました。
 コウヤマキもツガも中間温帯林を特徴づける針葉樹です。木曽五木のひとつ、コウヤマキは、和歌山県高野山に多いことから名づけられました。これらの針葉樹は、亜高山帯の針葉樹とは違い、低所の照葉樹林帯(暖温帯)や落葉広葉樹林帯(温帯)に生育するものです。またコウヤマキは、日本の特産種で太平洋側から内陸に生育する樹木です。(高森山井出の小路山丸黒山参照)
 日本の中間温帯林は針葉樹が豊富です。起源の古い裸子植物の針葉樹が、被子植物地帯に混在しているといえます。さらに中間温帯林内には、原始的な性質を残した古い植物が自生していることがあります。なぜ日本に、このような森林帯が出来上がった理由については、氷河期、間氷期の日本の自然環境が関係していそうです。つまり、氷河時代、日本が大陸氷床の下にならなかったこと、大陸と地続きになったことなどです。これは、日本の高山植物の起源、ブナ帯の植生が豊富な理由とも関連しています。しかし、不明な点が多いので今後の研究が必要です。(北之俣岳参照
【参考】大場秀章(1991):森を読む、岩波書店
岡部 誠(2001):木の名前、婦人生活社
中川重年(1994):針葉樹、保育社
小野木三郎(1989):北アルプス山楽山歩、教育出版文化協会


山頂のコウヤマキ(手前の葉)とツガ(中央の樹幹)
【登頂日】2002年3月17日など
【標高】775m
【場所】岐阜県益田郡下呂町
【記録】12:05 山麓東側(標高500m付近) 12:55 山頂着 13:00 山頂発 13:45 山麓東側(自動車)入り口に標識はありません。