北之俣岳のお花畑
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 黒部五郎岳から太郎平までの稜線は、なだらかな斜面が広がる高原の山です。その中のピークが北之俣岳、黒部源流を隔て東側には雲の平が広がります。そして、なだらかな広い斜面(高山草原)には、ハクサンイチゲやチングルマのお花畑が見事です(日本の植生)。(白山参照)
 ハクサンイチゲもチングルマも、雪渓近くの湿った場所に咲く白い花です。これらは、氷河時代にユーラシア大陸から、千島、日本へと南下して、今高山帯に取り残されているものです。今でも近縁種が、ユーラシア大陸北部や北アメリカ大陸に分布します(山の花学、山の自然学入門)。(寺地山参照
 チングルマは、草に見えますが小低木です。ハクサンイチゲに比べうやや乾燥した場所に咲きますが、両方が並んで咲いていることもあります。ハクサンイチゲの花びらはとがっている感じ、チングルマのそれは丸っぽい感じでやや黄色みをおびています。背丈は、ハクサンイチゲのほうが倍くらい高いので区別は容易です。チングルマの名は、稚児車からきたといわれます(高山植物ガイドブック)。
 氷河時代は繰り返しやってきましたが、最後の氷河時代が終わったのが約1万年前です。氷河時代には、飛騨山脈にも氷河が発達しました。現在、高山植物は高山に隔離状態です。しかし、1万年程度の時間では各山域の種が分化するまでには至りません。また、氷河時代は、陸地の氷河が増えて海水面が低下したとはいえ、山麓まで高山植物が分布できたわけではありません。高山帯は氷河時代でも飛び地でした。飛び地を高山植物がどうやって渡ってきたのか謎だそうです(山の自然学入門)。(高森山吐月峰
【参考】小泉武栄・清水長正(1992):山の自然学入門、古今書院
鈴木庸夫・長塚洋二(1997):高山植物ガイドブック、永岡書店
宮脇 昭(1977):日本の植生、学研

小野木三郎(1994):山の花学、東京新聞

ハクサンイチゲ(右)・チングルマ(左)の咲くお花畑(背景は北之俣岳山頂)
【登頂日】2001年7月24日など
【標高】2661m
【場所】岐阜県吉城郡神岡町
【記録】5:00 黒部五郎小屋テント場発 7:30 黒部五郎岳山頂着 8:30 山頂発 10:05 中俣乗越 11:00 赤木岳近くの雪渓着 11:55 雪渓発 12:40 北之俣岳山頂着 14:30 太郎平小屋 14:50 小屋発 15:10 テント場着