黒手山のダケカンバ林
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 大野郡朝日村の黒手山は、御料林としてヒノキの伐採が厳禁されていたので、四季を通して黒々としこの名が生まれたといいます(続ぎふ百山)。(松ヶ洞山栃尾山漆山岳参照)
 しかし、今は伐採が進み植林地の山となっています。山頂付近の尾根では、尾根の西側がカラマツ林、東側がダケカンバ林でした。また、尾根には鉄柵の跡があったので、かつては放牧地だったようです。カラマツは放牧をやめてから植林されたものでしょう。ヒノキ、スギ以外にカラマツも植林されることがあります。一方、ダケカンバは、ヒノキ等の伐採後に生育した2次林と考えます。ダケカンバが、1,300m程度の標高で林をつくることは珍しいことです。(唐塩山日影平山参照)
 ダケカンバは、本来高山帯(針葉樹林帯)と亜高山帯(ハイマツ帯)の間に群落をつくる陽樹です。特に雪崩の多い崩壊地や谷筋斜面に育ちます。それは、雪崩があっても、幹が曲がりくねっているダケカンバは生き残ることが多いからです。雪崩の少ない尾根上は、シラビソ、オオシラビソの針葉樹から直接ハイマツ帯に移り変わります(日本の植生)。
 黒手山のダケカンバ林は、幹の太さが直径10cmもないことから百年以上も前からあったものとは思われません。付近の山でもこの標高で、単独の樹木としてはダケカンバが混在しているので、成長の早いダケカンバがいち早く林を形成したのでしょう。このまま放置されれば、ここで本来森林をつくる陰樹、つまりヒノキ等の針葉樹に移り変わって行くと予想します。陰樹の生育が進むと林床が暗くなるので、ダケカンバのような陽樹は生育できなくなるからです。(高森山丸黒山参照)
 黒手山へは、大広林道からカナギ洞峠を利用しました。峠から尾根筋に道があります。しかし、道路工事で斜面が切られているので、登り口はわかりにくいと思います。町村境の尾根を30分ほど歩き、鉄柵の跡から右へ行きます。柵に沿った踏み跡を少したどると朝日村の山頂です。
【参考】岐阜県山岳連盟(1993):続ぎふ百山、岐阜新聞
宮脇 昭(1977):日本の植生、学研
山頂付近(左:カラマツ林、右:ダケカンバ林)
【登頂日】2003年4月29日
【標高】1317m
【場所】岐阜県大野郡朝日村
【記録】12:20 カナギ洞峠(大広谷) 12:30 右側林道終点 12:50 稜線 13:10 柵 13:15 山頂着 14:00 山頂発 14:05 町村境 14:30 稜線 14:40 カナギ洞峠