笹魚のある尾根道・川上岳
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 川上岳の語源は、「かはうれ」からきたとされます。「うれ」とは、川の上流の意味です(山の名前で読み解く日本史)(西水源山参照)。
 川上岳は、以前はニホンオオカミが出現したという記録があるくらい奥深い山でした。(コンサイス日本山名辞典、手掛岩山参照)また、川上岳(かおれだけ)は位山三山の主峰であり、その山頂からの360度の眺めは飛騨のすべての山が見えるといっても過言ではありません。1625mの山頂は、イブキザサの生えるドームになっています。登山道は、萩原町、馬瀬村、宮村の3方からあります。また山頂と位山をつなぐ鍋つる尾根には、天空遊歩道が整備されました。(位山参照) 
 川上岳付近では、稜線はイブキザサ、山麓はミヤマクマザサが見られます(高山市の植物)。飛騨の山域では、北西部の深雪地域はチシマザサ(猪臥山西水源山参照)、南部の標高の低い少雪地域はミヤコザサ(高樽山八尾山参照)、その間にイブキザサ(ミヤマクマザサ)が分布します。(白草山竜ヶ峰参照)
 イブキザサとミヤマクマザサは、飛騨中央部から東部に分布するササです。葉の裏に毛のないタイプがイブキザサ、毛のあるタイプがミヤマクマザサです。イブキザサとミヤマクマザサは、一般にはクマザサ(熊笹)といわれます。
 2000年の秋に、宮村から川上岳に登ったところ、尾根や山頂付近のイブキザサの中に、たくさんの笹魚(ササウオ)を見つけました。笹魚は本当の魚ではありません。ササウオタマバエという小昆虫の寄生によってできた虫こぶの1種です。葉や茎の成長が虫によって妨げられ奇形になったのが笹魚です。(飛騨おもしろ博物館)
 江戸時代の飛騨の代官、長谷川忠崇は、笹魚がイワナになるという説を確かめるため、笹魚を焼いてみたといいます。そのため、笹魚の学名には、ハセガワの名が使ってあります(新ひだ風土記)。また、江戸時代、笹魚は幸運を呼ぶ縁起物とされ飾り物として人気がありました。そして笹魚の産地として、飛騨平湯が有名だったそうです(飛騨おもしろ博物館)。始めて見つけた笹魚にうれしくなり大切に持帰りました。
 登山道は、萩原町山之口ルート以外に、宮村、馬瀬村からもあります。
【参考】下畑五夫(1997):新ひだ風土記、岐阜新聞社
飛騨自然史学会(1993):飛騨おもしろ博物館、中日新聞本社
長瀬秀雄(1987):高山市の植物、高山市
徳久球雄(1991):コンサイス日本山名辞典、三省堂
谷 有ニ(2002):山の名前で読み解く日本史、青春出版社


川上岳の登山道で見つけた笹魚
【登頂日】2000年11月23日など
【標高】1625m
【場所】岐阜県大野郡宮村(萩原町、馬瀬村)
【記録】10:17 宮村登山口 11:35 稜線 12:20 山頂着 13:38 山頂発 14:05 稜線 14:50 宮登山口   宮村登山口へは、林道ゲートから徒歩で約1時間くらい。
【参考】(萩原コース〜鍋つる尾根〜位山)2000年5月27日
7:45 山之口川橋(704m) 8:33 登山口 8:38 沢(休憩) 8:38 沢発 10:05 尾根(1430m) 10:17 尾根発 11:20 馬瀬道分岐 11:38 萩原道合流 12:05 川上岳山頂 12:35 川上岳発(鍋つる尾根) 13:50 1342m三角点 15:25 位山山頂着 15:40 位山山頂発 16:25 1233m三角点 17:15 モンデウススキー場着