神代からの名山・位山
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 位山は、近くの船山(ふなやま)、川上岳(かおれだけ)とともに位山3山と呼ばれます(船山川上岳参照)。清和天皇の時代、西暦870年頃、飛騨国司が愛宝山(位山の旧名 あぼうやま)に紫色の雲を3回見たという記録があるそうです。古来、紫色の雲雲は、めでたい兆候と思われていました。ただし位山の旧名「愛宝山」は、もとは乗鞍岳であったともいいます。古今和歌集(905年)の歌などで、乗鞍岳ではなく位山の名が使われているからです。位山の山名は、神の座所である「位」に由来しているとも、この山のイチイの木を笏(しゃく)の材料として朝廷に献じたことに由来するともいわれます。(乗鞍岳丸黒山参照)
 地元の宮村には、位山3山の伝説があります。それは神代の御代のことでした。位山には男の神様、船山と川上岳にはそれぞれ女の神様が住んでおられました。2人の女神は、同時に位山の男神に求愛されました。そして2人は男神と次のような約束をしました。満月が位山の頂上に来るのを合図に、2人の女神はそれぞれの山を出発し、男神の元へ早く着いたほうが嫁になれると。入念に化粧をしてから出発した船山の女神は、遅れてしまい競争に負けました。船山の女神は、それを悲しみ位山との間に深い溝を掘りました。それが今の無数河川です。位山と川上岳をつないだ道が鍋つる尾根です。今の刈安峠にある湿地はかつては池になっていました。その池の主が、山麓に移住した2人とその子供達の神々だったといわれています。(竜ヶ峰参照)
 鍋つる尾根は、近年、天空遊歩道として整備されました。ちょっとした縦走登山を体験できます。また、位山の登山道の所々には巨石がいくつもあり、それぞれ、鏡岩、畳岩、御手洗岩、門立岩、尻立岩、御神楽岩などの名が付いています。このような巨岩は、この付近を広くおおう濃飛流紋岩の山の山頂や尾根によくありますが、位山には特に多いようです。山頂は平になっていて高天原といいます。山頂部には天ノ岩戸という巨岩もあり神話を連想しながら登る山旅となります。

【参考】下畑五夫(1997):新ひだ風土記、岐阜新聞社
岐阜県山岳連盟(1975):ぎふ百山、岐阜日日新聞社
宮村むかし話刊行実行委員会(1990):宮村の昔ばなし、宮村役場

登山道途中にある畳岩
【登頂日】2001年10月28日など
【標高】1529m
【場所】岐阜県大野郡宮村
【記録】7:25 位山モンデウススキー場(刈安峠) 8:00 リフトトップ着 8:10 トップ発 8:20 三角点 9:25 山頂着 9:35 山頂発 10:25 リフトトップ着 10:30 トップ発 10:55 モンデウススキー場着