西水源山と西ウレ峠
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 飛騨美濃を結ぶせせらぎ街道。その西ウレ峠から西水源山(にしうれやま)に遊歩道があります。
 遊歩道の指導標では山頂としか表示がありません。また地図にも山名表示がありませんが、地図の標高点1313m地点付近は西水源山と考えられます。というのは、斐太後風土記には、「西水源山」の名があるからです。つまりニ俣村の項を見ると、「村名義は、龍馬嶺ごえの官道と、西水源(ウレ)山ごえ六厩村へ出る山路、此村の中にて、ニ岐になれば、村名に負いしなるべし。」とあります。さらに「川上川と西水源川とも、此村中にて落ち合いて流れぬ。」と書いてあります。風土記には西水源山付近の絵図も示してあります。図を見ると、西水源山の北側から六厩に抜ける道があり、川上川は東側の龍馬嶺から、一方西水源川は西側の西水源山から、それぞれ発しニ俣で合流していることがわかります。
 西水源山の語源は、水源のことを「うれ」と呼ぶことに由来します。西水源山はちょうど日本海に注ぐ宮川水系と、太平洋に注ぐ飛騨川水系の分水嶺上に位置します。まさしく飛騨の河川の水源の山です。かつては、水を蓄えるブナ林がうっそうとしていたと推察されます。(丸黒山参照)西水源川が合流する川上川(かわかみがわ)も、もともとは「かわうれ」がなまったものでしょう。(川上岳三国山参照)
 また山頂の東側には、チシマザサがあります。この標高では、このあたりがチシマザサの南限となるようです。(川上岳猪臥山参照)
 飛騨には、「高麗に人参絶へたらば飛騨の唐ノ川のうれに有るべし」という言い伝えがあります。唐の川とは、猪伏山のふもとの古川町畦畑(うねばた)の川のことです。「うれ」とは川の上流、水源のことを指します(飛騨国中案内、日本に名所が又1つ)。
 この山は、よっせーさんの記録を読んで登って見ました。
【参考】富田礼彦(1873):斐太後風土記(上巻)、雄山閣(復刻版)
上村義満(1746):飛騨国中案内、大衆書房(復刻板)
久保田四郎(1932):日本に名所が又一つ、下呂温泉と飛騨案内、有田 薫
ブナのある山頂付近
【登頂日】2003年4月26日など
【標高】1313m
【場所】岐阜県大野郡清見村
【記録】11:20 西ウレ峠(林道) 11:25 歩道入り口 11:50 山頂着 12:45 山頂発 13:10 西ウレ峠