大洞山の天狗様
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 岐阜県最北端、神岡(船津)の町を見下ろす大洞山には、昔から天狗が住んでいると信じられていました。ふもとのあちこちには、天狗の泊木がありました。天狗は酒好きなため、近くの造り酒屋は、毎年12月30日の晩に2升3升と酒を献上しました。
 天狗は、たいくつなとき、人をさらって村の人が騒ぐのを楽しみ、2,3日もするとさらわれた人を家の前に連れて来る事もありました。あるとき、天狗は村の男の子のえり首をつかんで山に帰り、修業をさせ天狗の跡取にしようとしました。しばらくしてその子は、家族に会うため家に戻りました。ただし、必ず山に帰る約束を天狗としていました。家族は、子供を返さないために子供を大黒柱に縛り付けてしまいました。ところが、子供は自分で縄をほどいて山に帰ったといいます。一方、願掛けや占いをかなえてもらえる天狗様とされていたので、昭和になってからも神岡の町の運動会では、「天狗さん」という応援歌が歌われました。(天ヶ岩伊吹山高天良山舟伏山阿寺天狗岳水無山参照)
 上記は伝説や昔話ですが、「ひだびと」によると次のような実話も残っています。たとえば、大正13年(1925年)の6月、船津町堀川町の野村吉兵衛氏の3男の正男君(当時6才)が、大津神社の池に落ちてから行方不明になりました。たまたま、大洞山に薪を拾いに行った人が、山中でこの子を発見しました。泣き声がしたからでした。とても子供が数時間で行けるような場所ではありませんでした。このようなとき、村人は天狗様のしわざだとうわさをしました。他にも昭和初期ころまで、大津神社で遊んでいた子供が、大洞山に登って大騒ぎになったことがあったようです。
 大洞山へは、国道41号線沿いの大津神社から登山道があります。標高1,200mくらいまで、コナラ林、その上、山頂はチシマザサとブナ林です。樹間からまだ白銀の薬師、北之俣、笠、黒部五郎が見えました。
【参考】神岡のむかし話編集委員会(1980):神岡のむかし話、神岡町教育委員会
和仁市太郎(1936):船津の天狗、ひだびと第7号(飛騨考古土俗学会)


大洞山の天狗の岩棚
【登頂日】2000年5月4日など
【標高】1349m
【場所】岐阜県吉城郡神岡町
【記録】9:25 大津神社 標高420m 10:00 大洞天狗の岩棚(7)810m 12:00 山頂着 13:40 山頂発 14:30 天狗の岩棚 15:00 大津神社
 登山道は、一部道が消えかかっているので注意が必要です。不動様があったら右に道をとり、鳥居をくぐったら左に曲がります。その数100m先、送電線鉄塔から標識に沿って山道に入ります。鉄塔をすぎてすぐ、横道がありますが迷わず直登します。ここから道が不明瞭です。ポイントは「大洞山8」のプレートが見えたら、90度右に曲がり斜面を直登します。横道が何度もクロスしますが、そこには入らず直登してください。