阿寺天狗岳と天狗岩
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 加子母村の天狗岳は、阿寺山地の井出の小路山と高樽山の間にあります。山名の由来は、山頂直下にある天狗岩にあるようです。確かに、天狗の顔を想像させる険しい岩壁がありました。国土地理院の地形図に山名の記載がないため、三角点名称の天狗岩の名で呼ばれることが多いようです。特に天狗にまつわる伝説は見当たりません。(天ヶ岩大洞山舟伏山伊吹山高天良山参照)
 しかし、長野県西筑摩郡誌(大正4年、1915年)をひもとくと、「阿寺天狗岳(標高1824m)」の記載がありました。他の山との位置関係から、これは天狗岩のある山名に違い有りません。つまりこの本によると、井出の小路山から小秀山、御嶽にたる稜線上の山や峠の位置関係や名前と標高がわかります。真弓峠、白巣峠、小秀山、三国山、椹谷山、三浦山等は現在の地形図と同じ名であり、記載してある標高も現在の地形図とほぼ同じです。一方、信州側からは、井出の小路山を阿寺樽ヶ澤山(標高1806m)、高樽山を阿寺池山(標高1672m)と呼んでいたことがわかりました。また、現地の営林署の案内表示板には天狗岳の名称がありました。
 以上から、天狗岩のある山は、阿寺天狗岳または天狗岳の名で呼んでもよいと思います。なお、岐阜県地理地名辞典によると、阿寺(あてら)の名は、「樹木の日かげの側」の意です。日本各地の山地の谷に分布する地名です。林業者の間では、アテラの側に斧を入れるというような語の使い方をします。
 天狗岳に登る道はありません。井出の小路林道(ゲート有り)から近江平橋まで歩きます。ここから急な谷を登るとカラ谷になります。谷の上部からはやぶ漕ぎです。人が登った跡や赤テープがあり、尾根に出ると右手に天狗岩が見えました。さらに登ると岩場になり展望が得られました。阿寺山地の山々の他、恵那山の向こうには伊勢湾(たぶん)方面が見えました。ヒノキやシャクナゲに囲まれた三角点のまわりは刈り払いしてありました。落石の注意が必要ですが充実感のある山旅でした。林道はよく整備されているので、自転車を持って行くと帰りに時間短縮できます。
【参考】長野県西筑摩郡役所(1915):西筑摩郡誌、西筑摩郡役所
岐阜地理学会(1978):岐阜県地理地名辞典、地人書房

天狗岩

井出の小路林道からの天狗岳

【登頂日】1998年5月31日
【標高】1824m
【場所】岐阜県恵那郡加子母村
【記録】6:45 井出の小路林道入口 7:23 高樽林道四つ辻 7:38 井出の小路橋着 7:46 井出の小路橋発 8:18 美林橋 9:09 近江平橋(1240m) 9:25 近江平橋(近江谷) 11:04 谷上限(1690m) 12:15 山頂着 13:08 山頂発 15:03 近江平橋着 15:12 近江平橋発(マウンテンバイクで降りる) 15:22 美林橋 15:28 井出の小路橋 15:32 四つ辻 15:43 林道入口