漆山岳のみやざき雲
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 漆山岳は飛騨神岡町漆山地区の背後の山です。江戸期の飛騨国中案内には、「漆山ヶ嶽と云て大山あり。此山の頂上より近傍の山々多相見る所なり。」とあります。そして見える山として、飛州の山々は申すに及ばずとした上で、「越中国の薬師ヶ嶽、立山、別山、剣、浄土山、富山のあんにょぼ山、権現山、加賀国栗柄山、能登国ほうだつ山」をあげて眺望の良さを記してあります。山名は、漆木を植えるのに適しているというふもとの漆山に由来しています。(斐太後風土記)(栃尾山松ヶ洞山黒手山漆洞山参照)
 「みやざき雲」とは、晴れの日の夕方、漆山岳の山頂部にかかる雲の名称です。漆山地区では、この雲が山の南寄りの峰の下に入ると翌日も必ず晴れとなり、峰の上を越えれば雨となるといいます。(みやざき雲)
 みやざき雲に関する調査はまったくなく、その成因は明らかでありません。ただ言えるのは、雲が夕方に現れるので、やはり晴天のきざしとされる飛騨の朝霧や、朝の峰にかかる雲とはまったく別の成因と考えられること。みやざき雲は漆山岳付近特有の現象であり、約10km北方のほぼ同標高の大洞山にはこの種の雲がかからないこと。寒気の侵入の場合には、漆山岳も大洞山も稜線に雲がへばりつくが、これはみやざき雲とは別の現象であること。などです。(二十五山参照)
 「みやざき雲」の成因や実態を気象データから明らかにすべく、気温・相対湿度のセンサーを取り付けるため漆山岳に登りました。
 神岡町側から漆山岳へは道がないので、西漆山地区から森谷をつめ稜線に出ました。西漆山集落2軒目の裏あたりにお堂が見えるので、そこからしばらく道があります。10分程度登ってから右へ水平道を行くと森谷です。森谷は、夏草が生い茂っていましたが、傾斜は思ったほどなく、踏み跡らしき道や上部では涸谷を登れました。稜線の向こうはスギの植林地となっていて尾根を行くと道がありました。どうやら宮川村ソンボ谷からは道がありそうです。
 道は、山頂近くの電波の反射塔までありました。そこから少し藪こぎをして隣の峰に登るとチシマザサの間から山頂が見えました。そこからチシマザサを刈った跡があり山頂までたどることができました。
 山頂には北陸電力が昔使ったという雨量観測所の跡があり、その向こうに三角点がありました。あいにくチシマザサのため展望は良くありませんが、反射塔では好展望が得られます。稜線上はビュービューと風が強いことがわかりました。みやざき雲には富山平野方面からの風が関係しそうです。
 長丁場の山行になり、帰りは谷の水取り場からホースをたどると西漆山まで道があり助かりました。5時少し前に下山すると、漆山岳にはみやざき雲がかかっていました。翌日はもちろん晴天でした。
【参考】上村義満(1746):飛騨国中案内、大衆書房(復刻板)
富田礼彦(1873):斐太後風土記(下巻)、雄山閣(復刻版)
荒井国光(1999):奥飛騨に育って みやざき雲、東京経済

下山して見た西漆山からの「みやざき雲」
【登頂日】2002年10月15日
【標高】1393m
【場所】岐阜県吉城郡神岡町
【記録】8:30 西漆山 11:50 稜線 12:40 電波塔 13:05 山頂着 14:05 山頂発 14:30 電波塔 15:00 稜線 16:45 西漆山