天の夕顔の天蓋山
山語り目次  地図検索
 神岡町山之村は、神岡市街地から標高差500mの山道を登った場所にあります。その準平原(尾城山参照流葉山参照)特有のなだらかで牧歌的な風景は、とても山上の土地とは思えません。天蓋山(てんがいさん)は、その山之村「天の夕顔」という道の駅から、手入れの行き届いた登山道をたどって手軽に登れます。また、駅付近はキャンプ場です。
 「天の夕顔」とは、作家「中河与一」の小説の題名です。その主人公は純愛を貫くため、孤独を求めてこの幽境に住み着きました。小説は、実在の人物からの聞き取りで書かれたといいます。モデルが住んだという小屋が、山之村森茂地区に終戦直後まであったそうです。森茂地区の高台には、昭和46年「天の夕顔」の文学碑もできました。石碑には、「天の夕顔の主人公かつて此の地に庵を結んで幻住す」と記してあります。また、「天の夕顔」の駅には文学館があり、作家「中河与一」の資料を無料で見学できます。
 天蓋山の山頂からは、360度の展望です。特に、飛騨山脈笠ヶ岳から、黒部五郎岳、北之俣岳、薬師岳を真近に見る景観は絶景です。反対側には、白山、そして飛騨から越中の山々を一望できます。冬晴れの12月、天蓋山に登ると雪山の世界でした。雪の薬師岳がどっしり鎮座していました。小説で、主人公が山之村から薬師岳に登る場面があります。昭和37年、作者は山之村に来たことはありませんが実際に薬師岳に登り、天の夕顔の薬師岳に登る場面を一部手直ししたそうです。

【参考】岐阜県高等学校国語研究会(1989):文学飛騨の風景、岐阜県高等学校国語研究会
道下 淳(1988):濃飛文学百話、岐阜県ユネスコ協会

天蓋山からの薬師岳
【登頂日】2000年12月17日など
【標高】1527m
【場所】岐阜県吉城郡神岡町
【記録】7:00 キャンプ場 8:50 山頂着 9:50 山頂発 10:40 キャンプ場