野菜名のついた山・蕪山
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 奥美濃、板取村の蕪山(かぶらやま)は、名前の通り、カブの頭を思わせるどっしりとした山容をしています。その名は、板取村役場によると、かつて開墾や焼畑がふもとで行われ、栽培されたカブラの名にちなんだともいいます(東海の百山後編)。(火山高登山参照)
 野菜の名前が山名になるのは珍しい例です。カブといえば、飛騨の赤カブの漬物が有名ですが、ちょうど蕪山付近は、飛騨を中心とする赤カブ文化圏の南縁付近に位置します(フィールドワーク入門)。
 カブには、様々な品種があります。その古名は、「かぶらな」です。今でも飛騨などでは、赤カブの漬物を「かぶらづけ」といいます。また飛騨紅カブは東日本系、白い近江カブは西日本系です。東日本系のカブは、西日本系のカブに比べ寒さに強い品種が多いといいます。東日本系と西日本系のカブの境界は、およそ愛知県から岐阜県そして福井県付近です。
 カブの栽培品種の境界が、東日本と西日本の文化的境界の中部地方にあることは興味深い事実です。弥生時代の前期には、弥生文化の西日本と縄文文化の東日本という違いが100年以上も続きました。東日本と西日本の民俗、社会構造の違いの起源はこのあたりだといわれています。たとえば、西日本の谷地名と東日本の沢地名の境界や、東日本と西日本の方言の境界なども、愛知県から岐阜県、富山県付近になります(森林の思考・砂漠の思考、東と西の語る日本の歴史)。
 蕪山へは、板取村の21世紀の森から登山道があります。山頂からは、御岳、乗鞍、白山が見えました。帰りは、板取川温泉に入ることができます。
【参考】市川健夫(1985):フィールドワーク入門(地域調査のすすめ)、古今書院
鈴木秀夫(1978):森林の思考・砂漠の思考、NHKブックス
網野善彦(1982):東と西の語る日本の歴史、そしえて文庫
読売新聞取材班(2002):東海の百山後編、人間社

ふもとの上ヶ瀬からの蕪山
【登頂日】1996年11月17日
【標高】1069m
【場所】岐阜県武儀郡板取村
【記録】10:06 21世紀の森(遊歩道コース) 11:45 山頂着 13:05 山頂発 14:09 21世紀の森(奥牧谷コース)