大鼠山(おおねずやま)と鼠石
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 大鼠山は、神岡町山之村の深洞(ふかど)湿原の近くにあります。湿原一帯は起伏のゆるやかな平坦地となっていて、平坦地の西端に大鼠山があります。岐阜県の十二支によると、大鼠山の名は、山の形がネズミに似ているためと伝えられます。
 この山にネズミにまつわる話はありません。しかし、隣村の上宝村双六には、「鼠石」という石があり、岐阜県の十二支によると次の伝説があります。「むかし双六の山にいたずら鼠が住んでいました。鼠はあるとき、神様の鏡餅を盗んで食べてしまいました。女神様は怒って、この鼠を石に閉じ込めてしまいました。以来村人がこの石に触ると必ず雨が降るようになりました。」また、飛騨の伝説と史話には次の記述があります。「この女神は白山様で、菊理媛の神でした。その神様のおられた村を鼠餅というようになりました。」(高鳥屋山参照)
 さらに、岐阜県の十二支には、「農協たかはら」からの引用として、双六の忠五郎の話があります。「忠五郎は大雨のあがった日の午後、双六川の川岸で、鼠の模様がしみついた石を見つけて、街道近くに安置しました。ある日、檀家回りに訪れた長倉の桂峯寺の住職が、この石を見て寺への寄進を願い出ました。村人がお寺に鼠石を運ぶと、双六谷の鼠が大暴れして、蚕や繭まで食べられました。加えて悪病も流行ったため、石を双六に持ちかえりました。村では、この石を9m以上動かしてはならないと伝えています。」
 双六には、この他、盤の石や材木岩があり、それぞれ伝説があります。いずれも、双六から山之村につながる大規模林道沿いにあり、標識もあるので、大鼠山登山の帰りに見物できます。(双六岳参照)
 山頂へは、森茂北之俣林道(ゲートあり)を利用して平坦面まで登ると、尾根に沿って歩道があります。この林道の入り口は、上宝村双六から山吹峠を越え、数km下るとあります(ゲートあり)。林道からは、深洞湿原や大鼠山に行けますが、標識はなく地図に歩道は記してないので、地図の読図が必要です。
【参考】加藤迪男(2000):岐阜県の十二支、岐阜新聞社
土田吉左衛門(1962):飛騨の史話と伝説(吉城郡の部)、北飛タイムズ
山頂付近のヒメコマツ林
【登頂日】2003年6月14日
【標高】1585m
【場所】岐阜県吉城郡神岡町
【記録】9:05 森茂北ノ俣林道深洞湿原入口 10:30 湿原から引き返す 11:00 湿原入口 11:10 林道の大鼠山入口(昼食) 11:40 入口発 12:00 営林署三角点 12:05 三角点着 12:15 三角点発 12:50 大鼠山入り口着(湿原調査に同行したため、自動車で林道に入れました)