小秀山の偏形樹
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 偏形樹とは、寒風害による乾燥などで、風上側の枝の成長が阻害された樹木のことです。つまり風上側の枝の成長が悪いために、枝は風下側に伸びた非対称の樹木となります。偏形樹によって、風の平均的な流れを知ることができます。
 阿寺山地の盟主、小秀山の稜線は、トウヒ、ネズコ、シラビソなどの針葉樹が点在する別天地でした。針葉樹は、どれも写真のように右手に枝があり左手に枝のない偏形樹でした。扁形樹は、風上側の枝葉が欠けます。理由は、冬の乾燥した風により、蒸散作用が促進されて水分欠乏になるためです。さらに、風に運ばれた雪片や氷晶が枝に付着するためです。
 偏形樹により小秀山では、稜線上のおよそ高度1,900mで、冬季(枝がダメージを受ける)に西寄りの風が多くて強いことがわかります。また、小秀山は太平洋側山地であるため、雪で樹木がすっぽり保護されることがありません。そのため、樹木の下のほうも風当たりがよければ、風上に枝がありません。(鏡平参照
 日本の上空は、冬季にジェット気流が速度を増しながら発散する場であるので、世界的にも風が強い地域です。ジェット気流は高度、5,000m付近に中心がありますが、高度2,000〜3000m付近でも西寄りの強風地帯となります。冬山の強風が恐ろしいのもジェット気流と関係があります。
 小秀山の山頂部は、樹林帯のわずかに上であるため、御岳のすばらしい展望台となっています。
 山名の由来については、長野県大滝村の古絵図に、小樋瀬沢と小ヒセ巣山、大樋瀬沢と大ヒセ巣山が掲載されていてその奥に小秀山とオオヒデがあります。この樋瀬が語源かと現在推測されます。(田口達也氏による)
【参考】吉野正敏(1989):風の世界、東京大学出版会
青山高義ほか(2000):日本の気候景観、古今書院

変形樹のある小秀山の稜線
【登頂日】1995年5月27日
【標高】1982m
【場所】岐阜県恵那郡加子母村
【記録】10:10 二ノ谷発 11:00 夫婦滝着 11:10 夫婦滝発 12:40 三ノ谷分岐着 13:00 三ノ谷分岐発 13:20 かぶと岩 14:05 山頂着 15:05 山頂発 15:45 かぶと岩着 16:05 三ノ谷分岐 17:55 三ノ谷林道 18:25 二ノ谷着