雪が守るオオシラビソ・鏡平
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 新穂高温泉から双六岳をめざして小池新道をたどると鏡平です。鏡平は、弓折岳から延びる尾根上の平坦地で池が点在しています。池に映る槍ヶ岳は、写真家(アマチュアも含め)の格好の撮影場所となっています。
 鏡平の標高は2303mで、ちょうど亜寒帯針葉樹林帯の上部なので、オオシラビソの樹木が点在しています(丸黒山参照)。鏡平のオオシラビソの樹高は5m程度しかなく、その樹形も上部の枝が短いか欠落して貧弱な感じがします。しかし、下部の枝は上部に比べ不連続に長くてどっしりしています。これに対し、新穂高ロープウェイ終点や槍平周辺などのオオシラビソは、枝が上部から下部まで連続的で三角形の樹形をしています。
 鏡平のオオシラビソの上部の枝が欠け下部の枝が残るのはなぜでしょうか。その理由は、雪が多いこと、そして尾根上の冬季の風が強いためだと推測できます。つまりオオシラビソが雪におおわれたとき、雪は下部の枝を冬の乾燥と低温から守るからです(北アルプス山楽山歩)。しかし雪面から出た樹木の上部の枝は、冬の強風による乾燥と低温で凍結し、付着した氷滴のため長い枝が折れてしまいます(風の世界、日本の気候景観)。(小秀山参照)
 5月の鏡平は、まだ雪の下にありました。写真の雪面上の樹木は、オオシラビソの上部です。真冬に比べ雪面が下がった分だけ、下部の長い枝の部分も見えました。
【参考】吉野正敏(1989):風の世界、東京大学出版会
青山高義ほか:(2000):日本の気候景観、古今書院
小野木三郎(1989):北アルプス山楽山歩、教育出版文化協会


5月の鏡平とオオシラビソ(後は槍ヶ岳)
【登頂日】2001年5月12日など
【標高】2303m
【場所】岐阜県吉城郡上宝村
【記録】6:15 新穂高キャンプ場 7:30 わさび平小屋着 7:40 わさび平発 10:30 鏡平着 11:50 鏡平発 13:30 わさび平着 14:00 わさび平発 14:50 新穂高キャンプ場