錫杖岳と烏帽子岩
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 錫杖岳は、笠ヶ岳につながる尾根上の岩山で、特に中尾温泉から見る勇姿はすばらしい。特に烏帽子岩は、僧の持つ錫杖を思わせ、山名の由来にふさわしい岩塔です(岐阜県の山)。錫杖の名は、江戸時代の書、飛州志にも見られ、「錫杖ヵ岳は、槍ヵ岳に接す」とあります。
 ロッククライミングの山として有名になったのは、昭和2年、関西のRCCクラブの藤木九三氏らがヨーロッパアルプス流の岩登りをしてからです(岐阜県山岳連盟、1975)。錫杖岳を代表する岩場は、本峰から東に派生する尾根の烏帽子岩と、そこから一気に切れ落ちている前衛フェイスです。烏帽子岩は、比高約100mで、西肩、東肩ルートがあります。前衛フェイスは、烏帽子岩と続く東尾根末端にあり、400m近い岩壁で、笠ヶ岳のクリヤ谷登山道を行く人は必ず仰ぎ見ます。(岐阜登高会、1968)。
 錫杖岳への一般登山道はありませんが、不明瞭ながら踏み跡が道となっており、登ることができます。クリヤ谷登山道から錫杖沢の出合いへは、登山道の左脇の赤布を手がかりに数10m降ります。出合には、夏場だとたいてい、ロッククライミングのテントが2つ3つあります。ここから錫杖沢を登りますが、沢の右手の赤布を手がかりに道があります。道をそのまま行くと岩場の下につながるので、出合いから約30分登った所で、まっすぐ行かず左手の踏み跡(左手に赤布がある)に入ります。すぐに錫杖の岩屋があります。
 岩屋のすぐ右横に接する錫杖本沢をさらに登ります。ここからは沢の石を乗り越えて登りますが、要所には巻き道があるので、これを利用しても良いでしょう。やがて左右の沢に分かれる二俣があります。右の沢を選び、小さな尾根を乗り越して、笹原の中を左の沢へトラバースします。左向こうに赤布があり、細長いルートが見えます。この笹の中をよじ登るとコルです。コルから右の尾根伝いに踏み跡があり、赤布が目印となります。岩の後ろにトラバースぎみに回り込みます。途中、ザレ場が1箇所ありますが、ザイルがかけてあり助かりました。シャクナゲの中の踏み跡をよじ登ると山頂でした。
 高度感ある山頂からは、ロッククライミングのこだまが聞こえました。なお、特に下りについて、踏み跡は枝分かれしてわかりにくい所があります。特にコルから上はルートをはずさないよう気をつけないといけません。また、沢の水量は少ないですが、沢登りの経験があるほうが安心です。案内表示板は皆無なので、読図や地形把握などに慣れた経験者向けの山です。
【文献】長谷川忠崇(1745):飛州志、岐阜新聞社(復刻版)
岐阜県山岳連盟(1975):岐阜百山、岐阜日日新聞社
島田 靖・堀井啓介(2005):岐阜県の山、山と渓谷社
岐阜登高会(1968):錫杖岳の岩場、岳人(奥飛騨特集)
山頂より烏帽子岩
【登頂日】2010年9月18日
【標高】2168m
【場所】岐阜県高山市奥飛騨温泉郷
【記録】6:40 槍見 7:10 第一飯場 7:35 渡渉 8:10 錫杖沢出合 8:35 岩屋着 8:45 岩屋発 9:25 二俣 10:25 コル 11:16 山頂着 12:05 山頂発 12:45 コル 13:30 二俣 14:00 岩屋 14:25 錫杖沢出合 14:50 渡渉 15:30 槍見