白谷山と梓川
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 白谷山は、焼岳火山群のひとつで、最も近い年代では約1万2千年前の噴火の記録があります。周囲を激しく侵食されていますが、山頂から尾根周辺は、ドーム状の地形の名残が残っており、かつては溶岩円頂丘がありました。(原山、1990)
 また、白谷山の東側、長野県側の上高地の梓川は、1万2千年以前の白谷山の噴火と山体崩壊により、岐阜県側がせき止められ、長野県側に流れるようになりました。(原山、2016)
 実際、約12万年前に噴火した岐阜県側の大棚火山の溶岩の上下には、上高地周辺の花崗岩礫があるので、この時の梓川は、岐阜県側の神通川(高原川)に流れていたことがわかります。(及川、山田、2020)
 さらに、64万年前、白谷山の西方の貝塩火山(福地山の近く)が噴火するまでは、梓川は、高原川ではなく、高山丹生川方面の小八賀川の方に流れていました。高山市街地近郊の上野泥流堆積物を調べると、上高地起源の奥又白花崗岩や穂高岳付近から来た穂高安山岩類の礫が見つかります。これは、高山市側に梓川が流れ込んでいたことを示します。(原山、2016)
 つまり、現在、長野県松本市方面に流れている梓川は、1万2千年前以前、岐阜県側の高原川水系に流れ、64万年前以前は岐阜県側の丹生川高山方面に流れていました。
 昔、梓川が上高地から岐阜県方面に流れていたことをさらに証明するため、地下に埋もれた谷地形を捜して、地震計を用いた微動アレー探査が行われています。
【参考】原山 智(1990):『上高地地域の地質 』、地質調査所
原山 智(2016):『飛騨山脈の成長と本郷平の成り立ち』、ジオパーク講演会資料
及川輝樹・山田久美(2020):『日本の火山に登る』、ヤマケイ新書
福地山と高原川の谷、神岡方面(山頂より)
【登頂日】2022年6月28日
【標高】2188m
【場所】岐阜県高山市奥飛騨温泉郷
【記録】5:50 餌掛林道ゲート 6:20 雨量観測所 7:00 堰堤出合い 9:10 1760m尾根 11:20 県境尾根着 11:30 県境尾根発 13:05 山頂着 14:00 山頂発 15:06 県境尾根(支尾根へ) 17:40 堰堤出合い(ここから林道) 18:40 餌掛林道ゲート