湯ヶ峰と下呂石・小川石
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 湯ヶ峰は、下呂温泉の東方に荒々しい崖があるのでそれとわかります。この山からは、庭石として使われる小川石と石器の材料として有名な下呂石が採れます。小川石は、赤褐色または灰色っぽい石で板状に割れる性質があります。下呂石は、黒褐色で硬く破片が刃物のようにするどくなります。
 湯ヶ峰は約12万年前に噴火した小さな火山です。その溶岩が、通称小川石と下呂石です。地質的には両者ともデイサイトまたは流紋岩という石に分類できます。そして、これらの石はここでしか採れない石です。小川石は、隙間が多いため、もろくて外見は下呂石と違いましすが成分的には同じです。
 先土器時代から縄文時代の中部地方の遺跡を中心に、下呂石を用いた石器が見つかっています。飛騨川の河床や物物交換で手に入れたのでしょう。石器を用いた時代、下呂石は信州の黒曜石と並ぶくらい貴重な石だったようです。
 湯ヶ峰は、林道を用いると20分程度で登れる山になってしまいました。しかし、小川谷から登ると湯ヶ峰の歴史を実感できます。湯ヶ峰山頂の南側の湯之平という平坦地には、約1000年前に湯が涌き出たという湯つぼの跡があります。この湯は文永2年(1265)に急に止まり、湯脈は現在の下呂温泉、益田川の河床に移ったという言い伝えがあります。下呂温泉の熱源は、湯ヶ峰の地下の冷え切らない溶岩であると予想できます。
【参考】飛騨地学研究会(1988):飛騨の大地をさぐる、教育出版文化協会
岐阜県高等学校地学教育研究会(1995):アース・ウォッチング・イン・岐阜、岐阜新聞社


下呂温泉からみる湯ヶ峰
【登頂日】1990年12月3日など
【標高】1066m
【場所】岐阜県益田郡下呂町
【記録】13:50 林道(大林) 14:25 山頂着 15:15 山頂発 15:40 林道(大林)