焼岳の煙による天気予測
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 焼岳は、飛騨山脈の中で唯一、煙を吹き上げている火山です。1990年まで火口付近への立ち入りは禁止されていました。焼岳へは、飛騨側の中尾温泉、信州側の上高地からそれぞれ登山道があります。他に、西穂山荘から稜線を南下して、新中尾峠経由で山頂に立つことができます。このコースは、歩く人も少なく原生林の尾根歩きを楽しめます。
 新穂高ロープウェイを降りて、西穂山荘に向かう途中、地元の天気のことわざをまとめた標識があります。その中に、「焼岳の煙が東に傾けば晴れ、急に北西に傾くと雨、少なければ晴れ、多ければ雨、山頂を巻くときは雨」というものがありました。
 「煙が東に傾けば晴れ」とは、焼岳の山頂付近が西風であることを意味します。移動性高気圧の前面、標高1,500m以上の高度は北西から西寄りであることが多いのでそのとおりです。次に「煙が北西に傾くと雨」とは、その付近が南東の風であることを示します。低気圧が西から近づくと南寄りの風が吹くのでこれも正しいです。「煙が少なければ晴れ」とは、西寄りの風によって煙が信州側に流されていると解釈できます。だから移動性高気圧のパターンです。「煙が多ければ雨」とは、逆に東〜南東の風によって煙が飛騨側に流されている状態です。これは低気圧の接近を示します。「煙が山頂を巻くときは雨」とは、上空の風がかなり強いときです。天候が悪化するとき、山岳ではかなりの強風になることが多いので、やはり正しいです。地元の人は、実に正確に天気と煙の関係を読んでいたことがわかります。
【参考】中田裕一(2000):飛騨山脈南部の夏山気象、全国高等学校総合体育大会予報
気象庁予報課予報技術研究会(1960):山の気象と遭難、朋文堂


上宝村の天気のことわざ
【登頂日】1996年8月19日〜20日
【標高】2458m
【場所】岐阜県吉城郡上宝村
【記録】(8月19日)15:25 ロプウェイ西穂高口 16:30 西穂山荘 (8月20日) 7:25 西穂山荘発 9:40 焼岳小屋着 9:57 焼岳小屋発 10:50 北峰山頂着 11:12 北峰山頂発 12:25 展望台着 12:45 展望台発 12:50 焼岳小屋着 13:40 焼岳小屋発 14:52 林道交差点 15:10 登山口着 15:30 登山口発 16:20 中尾温泉口