三方崩山の天狗の爪跡
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 春先、白川村の有名な合掌集落から南西方に、白銀をいただいて見えるのが三方崩山です。江戸期の飛騨国中案内の平瀬村の項では、「三方崩と言ふ山此奥の山なり。」と記しています。また、明治初期の斐太後風土記は、三方崩嶽として、「白山の前に、峙立たる大嶽には、此亦(また)三峯とも兀崩れて、谷々には、四時雪消ることなしとなり。」と記しています。登山口の平瀬から仰ぎ見ると、とても高度感のある山です。
 名前のように、山頂部から三方に崩壊があり、山頂近くの登山道も両側が切れ落ちています。山頂からは、東面が開け、南東に御母衣湖、北東眼下には合掌集落の荻町、対面には猿ヶ馬場山が見えます。その向こうは飛騨山脈の雄姿が北から南、御嶽山まで見えます。山頂手前からは、笈ヶ岳も見えます。白山は、後ろの奥三方山の肩に見えます。
 この大崩壊面は、白山に住む天狗が大暴れした爪跡だとする言い伝えがあります。実際は、対岸の帰雲山の崩壊跡と同じく、天正十三(1585)年の天正大地震の時にできた可能性が高いといわれます(新日本山岳誌)。
 山頂へは、平瀬から林道に入り終点から登山道があります。林道終点から標高差約1200mありますが道標も整備され、中腹のブナ林もすばらしいものです。しかし荒天時や残雪期、切り立った山頂近くの稜線は3000m級の高山同様の注意を要します。
【参考】上村義満(1746):飛騨国中案内、大衆書房(復刻板)
富田礼彦(1873):斐太後風土記(上巻)、雄山閣(復刻版)
日本山岳会(2005):新日本山岳誌、ナカニシヤ出版
山頂を望む
【登頂日】2006年9月23日
【標高】2059m
【場所】岐阜県大野郡白川村
【記録】9:13 林道終点登山口 11:05 ガレ場 11:27 あと1.8km看板 12:46 山頂着 13:51 山頂発 14:46 あと1.8km看板 14:53 ガレ場 15:53 登山口