朝日連峰・大鳥池のタキタロウ
体長1mを越す謎の怪魚  山の雑話目次

タキタロウ山荘からの大鳥池
 山形県の朝日連峰・大鳥池は謎の怪魚タキタロウで有名です。大鳥池は、標高963m、周囲3,506m、最深の深度68mの高山湖で、山の崩壊によって堰き止められた堰止湖です。池の下流は七ツ滝によってその下流と隔てられています。
 タキタロウは、地元では瀧太郎とも竹太郎とも記されてきました。タキタロウの体長は1m以上(時には2m)といわれます。最初にテレビカメラで撮影したのが、1985年、NHKの取材チームでした。以東岳に向かう途中、魚影を撮影しました。
 タキタロウの正体は、明治から大正にかけて放流されたヒメマスを起源とする説、イトウ説、陸封されたイワナの巨大化説等があります。地元では明治以前にもタキタロウはいたと伝えられ、まったく別種の魚と主張しています。いずれにせよ、体長50cm以上の陸封種のイワナや、陸封種のイワナとは特徴の違う体長1m以上の巨大魚が捕獲されるのは事実です。そのDNA鑑定もされました。
 しかしタキタロウは、大鳥池で捕獲される大イワナとは別だとされます。正体は今だはっきりしないようです。地元ではその剥製(はくせい)もあります。しかし、薬品による白化が著しくて種の同定は困難ということでした。
 泡滝ダムから約2時間半歩き急斜面を登り切ると、ブナ林の向こうに静かな大鳥池が見えました。ここが以東岳の登り口になります。連日の雨のため、2日間テントで停滞した後に帰りました。つり竿を持った釣り人も来ていましたが釣果はないようでした。小屋で釣料を支払うと鑑札がもらえます。ひまだったので雨の大鳥池を何度も眺めましたが、湖面はまったく静かで、めったに姿を見せないというタキタロウの魚影はやはりありませんでした。
【文献】石橋睦美(1995):日本の森あんない(東日本篇)、淡交社