茨城県の秀峰・奥久慈男体山
元は海底火山・差別侵食でできた山  山の雑話目次

鷹取岩より山頂を望む
 奥久慈男体山は茨城県北部の岩峰です。標高は654mしかありません。しかし周囲の展望は抜群で、山頂につながる尾根の西側はスパッと切れた断崖です。尾根と山頂の延長を北にたどると、袋田の滝という名勝があります。1等三角点の山です。
 断崖をつくる岩石は、火山角れき岩と溶岩流です。火山角れき岩は、安山岩質(粘性が中くらいのマグマ)の角ばったれきを火山灰が埋めています。れきと火山灰が凝結固化して硬い岩石になりました。溶岩流は、マグマがそのまま固化した部分と、破砕溶岩れき(水中での急冷による) を後から噴出した溶岩が包んだ部分からなります。
 火山岩は、茨城県ではここにしかありません。それは、およそ1,500万年前(新生代新第三紀)、日本海が拡大して今の日本列島の原型ができたとき、海底の裂け目に噴出した海底火山が起源です。
 断崖ができた理由は、火山活動が終了した後の隆起と侵食が原因です。山頂の西側の泥岩(泥質の岩石)に比べ、これら火山岩が、侵食に強く削り残されたためです。これを差別侵食といいます。岐阜県では、岐阜市の金華山等はチャートという岩石が差別侵食で残った山です。チャートは、火山岩ではなく、海中の放散虫(プランクトンの仲間)の硬い殻の堆積による堆積岩です。
【文献】笠井勝美(2002):茨城県奥久慈山地の地形と地質、第46回高等学校登山大会予報第1号、全国高等学校登山大会実行委員会