山の崖崩れ・落石の年周性と日周性
凍結・融解や大雨に伴う崖崩れ  山の雑話目次

双六岳へ向かう小池新道で起きた崖崩れ(2001年9月21日)
 山の落石にヒヤリとしたことは多かれ少なかれあると思います。急斜面の山道では、特に下山のとき落石をしないよう注意しなければなりません。ところで、人為的な落石とは別に、自然に起こる崖崩れや落石には何か法則性があるのでしょうか。
 富士山の砂走りでの落石事故が大きく報じられたことがありました。かつて、秋に八ヶ岳を縦走中、突然「ガラガラッ」と大きな音がしたので、音の方向を見ると硫黄岳の崖の一部の石が崩れるところでした。このような小規模な落石は、日周性の岩石の凍結・融解に伴って起こります。季節としては、春と秋に起こりやすい落石です。一方、大規模な落石・崖崩れは、年周性の原因によります。その原因とは、梅雨や台風などの大雨や、残雪の融解、年周性の岩石の凍結・融解などです。
 そうすると崖崩れが多い時期は、岩石の凍結・融解の起きる春先から初夏にかけてと秋です。特に大雨があると大規模な崖崩れが起こるといえます。このことは、涸沢での観測統計でもわかっています。また、岩盤の割れ目密度が大きいほど、頻繁に小規模な落石が起こります。しかし、崖崩れの季節的・天候的な傾向がわかっても、いつどこで崖が崩れるかとなると正確に予測できません。加えて、予測不可能な突発的な崖崩れもあります。
 崖崩れや落石の事故を避けるためには、落石の危険が感じられる崖下では休憩をしないようにし、特に岩道では、登山道以外の斜面が不安定な場所に踏み出さない注意が必要です。これだけでも、事故にあう危険性はかなり回避できると思います。大雨時の危険な場所の山行を避けることも当然として、安全登山を心がけたいものです。
 写真は、いつも危険そうだと思って歩いていた小池新道(岐阜県側新穂高温泉から双六岳への登山道)の上で起こった山崩れです。この崖崩れで登山道の一部が変わりました。
【文献】岩田 修二(1997):「山とつきあう」、自然環境とのつきあい方、岩波書店