笠ヶ岳穴毛谷の日本最大の雪崩
観察された雪崩としては国内最大  山の雑話目次

雪崩でなぎ倒された樹木(穴毛谷の対岸・左俣谷、2000年4月29日)
 2000年、3月27日午前10時50分、岐阜県上宝村新穂高温泉のわずか500m上流まで、笠ヶ岳穴毛谷から雪崩がやってきました。流下距離約4.6km、雪崩発生量は166万立方m表層雪崩でした。高度差、発生量とも、国内最大規模といわれています。砂防小路の除雪作業にあたっていた方が、休憩小屋ごと流されて尊い人命も失われました。
 この年は、3月下旬に大雪があり、例年よりも多量の雪が残る3月でした。日本雪氷学会の調査によると、当時の気象状況は、雪崩発生直前3月24日にまとまった降雪があり、26日には降り止みました。しかし、輪島の高層気象観測によると、稜線の上にあたる高度3,000m付近には、風速20m/sを越える北西寄りの強風が持続していました。そのため、稜線の風下(穴毛谷側)には地吹雪の吹き溜まりができていたと推定されます。その結果、晴天となった発生当日、新雪の下のざらめ雪の層がすべり面となり、吹き溜まりの過重に耐え切れずに大雪崩になったようです。
 2000年、4月下旬に新穂高温泉から鏡平をめざしました。例年なら屋根の見える鏡平山荘の屋根は雪の下でした。雪崩の爪跡として樹木がなぎ倒されていました。そして新穂高温泉の人もピリピリしていました。大自然の脅威だと思いました。

 【文献】日本雪氷学会(2001):日本最大の雪崩はいかにして起こったか(報告書概要版)