【射法訓の解説】
弓を持って射を行う場合に弓矢の操作に捕らわれて自己を失ってはならない。射は自己の筋骨をもって力行しなければならないことを忘れないように、ということである。
心気の安定を図れとのことである。総体の中央とは身体の中央に位する丹田を指すものである。
引き分けの際における推し引きの心得を示したものである。弓手をもって弦を押し、妻手をもって弓を引くというふうに反対に説示しているのはまことにおもしろく、これによって弓と弦の引き分けは押し引き相対応して均等に行なわねばならぬことを暗示しているのである。
押し引ききわまったならば、体の中央に置いてある心を丹田に納め、身・心・弓の和合を図れということであり、三位一体の「会」を示したものである。
和合の分離、すなわち会から離れに移る場合の作り方を示したものであり、基本体型の中央に位する胸の中筋より左右均等に分離せよとのことで、縦横十文字の離れを示したものである。
射の偉大なる気力を示したものである。的に対する中り、外れを言外におき、離れた矢先の鋭さは、あたかも鉄と石とが相剋して火の出るような、その鋭さを形容しているのである。
離れたあとの残身(残心)の射の位(射格)を示したもので、あたかも暁天における金体が白色を帯びて東に輝き、西に位する半月がこれと相対照している黎明の位であるというのであり、射によって生まれる悟りの姿の真実を詠ったものである。
− 「弓道教本」 全日本弓道連盟より −