飛騨川にせまる大坊山
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 大野郡久々野町の大坊山(おおぼやま)は、飛騨川の東岸にせまる山です。その名は、ふもとの大坊、大坊本谷に因みます。また大坊は近くの小坊とワンセットの地名です。
 斐太後風土記では、地名について次のように記してあります。「小坊村(こぼむら)、枝村大坊。ホ(坊)はすべて物に包まれ、こもりたるところをいえる古語也。されば山の周れる由をもて負る名也。」さらに、「此村は、河内郷七ヶ村(飛騨川沿いの村)の中では、土地もよく、田畑も多ければ、富(ホ)といいて、初め田畑を墾開しを、大富(オオホ)、後に開きしを小富(ホは府の意)と云いしを、後に假字の違いをも知らで、大坊・小坊と、かけるなるべし。」
 伊勢湾につながる飛騨川は、大沢山と大坊山の間を流れます。付近は険しい地形で交通の難所のため、古代の官道は船山より西の位山峠を通っていました。江戸時代初期に金森長近が久々野〜小坂間の難所を改修して人馬の通れる道にしました。これを河内路といいます。(史跡と史話)(唐掘山参照)
 この付近の地形が険しい理由は、約300万年以上前から飛騨川にあたる河川が侵食したからです。かつて、現在の高山盆地にあたる平地は、宮峠分水嶺のさらに南、久々野付近まであり、かつての分水嶺は大坊山付近の山塊であったとされます。(飛騨の大地をさぐる)
 大坊山へは、鈴蘭高原方面から阿多粕谷に下る舗装林道を利用します。阿多粕谷方面に自動車で下りると、舗装林道と阿多粕谷林道の分岐があり、阿多粕谷林道側にゲートがあります。そこに車を置き阿多粕谷林道を歩きました。山頂近く(平成10年度阿多粕林道工事延長300mの石標付近)から、尾根に沿う切り開きを登ると山頂三角点がありました。谷を降りる舗装林道は、途中で通行止のため、帰りは鈴蘭高源に戻ることになります。
【参考】富田礼彦(1873):斐太後風土記(上巻)、雄山閣(復刻版)
久々野町ふるさと文庫刊行会(1987):史跡と史話、久々野町
飛騨地学研究会(1988):飛騨の大地をさぐる、教育出版文化協会
山頂から御嶽山
【登頂日】2003年5月5日
【標高】1347m
【場所】岐阜県大野郡久々野町(朝日村)
【記録】12:55 阿多粕林道ゲート 13:20 登り口(平成10年度阿多粕林道工事延長300mの石標付近、ピンクの目印) 13:50 山頂着 14:50 山頂発 15:12 林道(1180m) 15:50 阿多粕林道ゲート(1070m)