天神山と天神様
山語り目次  地図検索
 天神山は、岐阜県益田郡下呂町久野川にあります。国土地理院の地形図には、山名の記載がありません。地元の限られた人以外に知る人は少ない山です。久野川で登山口を尋ねると、地元の2人が丁寧に教えてくれました。「ここからも登れるが、林道の終点からのほうが早く登れる」とのこと。また「山頂付近天神様には、鉄のすずりと筆もおいてあったが、いつのまにかなくなってしまった。若いころ天神様のほこらに使うトタンなどをかついで登った。」という話を聞きました。山頂の天神様のほこらの壁に、昭和42年4月吉日寄贈とありました。この石像そのものは、そんなに古いものではありません。しかし、前から天神様は祭ってあったのでしょう。天気は晴天、3月の空の下に御岳と阿寺の山々が輝いていました。
 学問の神様、天神様は、平安時代の歌人「菅原道真」が祭神となったものです。道真は、その才能により右大臣にまで昇進しましたが、九州の大宰府に左遷され亡くなりました。すると、京では災害が頻発し、道真の左遷に関係した人が相次いで不吉な死に方をしました。朝廷では、道真の祟りをおそれ、天満宮を祭ったのです。これが天神様の始まりです。
 天神社や天満宮は全国各地にあります。祭神は、もちろん「菅原道真」です。各地の神社境内に天満宮が祭られることはありますが、石像はあまり多くないようです。飛騨の山々の山頂には、小さな山でもなんらかの神様を祭ってあることが多いのですが、天神様を祭ってあるのは、今のところここしか知りません。なぜ久野川の人達は山頂に天神様を祭ったのでしょうか。鉄のすずりと筆はどこに行ったのでしょうか。
【参考】宗教民俗研究所(1996):ニッポン神さま図鑑、はまの出版
庚申談話会(1975):日本石仏事典、雄山閣


山頂近くの天神様
【登頂日】1999年3月14日登頂
【標高】884m
【場所】岐阜県益田郡下呂町
【記録】11:55 丸山林道終点(550m) 12:30 尾根(780m) 12:37 天神様(840m) 12:50 山頂着 13:53 山頂発 14:05 天神様着 14:20 天神様発 14:55 丸山林道終点